802.11ac アクセスポイントの性能を徹底比較!

携帯電話、タブレット端末、デジタルカメラ、メディアプレイヤーといったIT製品では、Wi-Fi技術によるワイヤレス通信機能を有する製品が急速に増加している傾向にあります。Wi-Fi規格についても802.11規格をベースとして802.11a、802.11b、802.11g、802.11nを経て現行の802.11acのリリースへと至りました。無線ネットワークの発展によって通信速度と変換効率が大幅に向上しつつある中、アクセスポイント関連製品の開発競争にも激しさが増しています。あらゆるIT製品に無線通信機能が搭載されるようになったため、アクセスポイントは家庭やオフィス、公共の場など生活の場に欠かせない製品となりました。多種多様な製品が市場に溢れる現状では、品質的に玉石混交状態にあることも否めません。信号カバー率と安定性が十分なレベルとは言えない製品も散見されるのが実情です。

アリオンではこれらの現状を考慮した試験プランを立案しました。対象となる機器は市販の3種類のアクセスポイントです。項目ごとに検証結果を記載し、問題点と解決方法を効率的に把握できるよう努めました。

表一

アリオンがこれまで培ってきた豊富な無線検証の実績から、アクセスポイントの利用シーンと重要項目を7つ策定し、機能的な重要性の高低に関わらず、幅広い評価項目を盛り込みました。また、異なるメーカーの機器を比較分析することで、機能的な優劣を把握することができます。検証項目の詳細は表2の通りです。

表二

I. スループット試験(Conductive Throughput Test

ユーザが最も重要視する点は、アクセスポイントの通信速度と通信の安定性です。当試験では、さまざまな帯域幅のチャンネルをシミュレーションすることでアクセスポイントの一定時間内におけるスループット性能の測定結果を元に変化曲線を描き、更に平均値、極大値を計測しました。次に、信号減衰がアクセスポイントのスループットに対して間接的な影響を与えていることを確認するため、二者間(スループットとパスロス)の結果を分析しました。この結果、アクセスポイントが帯域幅とチャンネルにおいて、一定水準のスループットと安定性を兼ね備えていることを確認できました。

試験結果(図1)では、AP 3が20MHz/Ch 36と20MHz/Ch 64で共に最適な通信速度を保っているものの、20MHz/Ch 128になると速度が急落することが分かります。AP 1とAP 2のスループットは、20MHz/Ch 64時には顕著な差はありませんが、全体的にはAP 1の性能が劣っていることが分かります。

圖一

データ転送の帯域幅を「Autoモード」に設定すると、アクセスポイントは自動的に最適な帯域幅を探して信号転送を行います。このモードでの試験結果(図2)から分かることは、AP 1はAuto/Ch 36とAuto/Ch 64で最も速度が低くなることです。着目すべき点としては、AP 1のデータ転送帯域幅の初期設定が「Autoモード」であった点です。初期設定状態のままで使用するユーザが多いという状況を踏まえて考慮すると、AP 1のAutoモードにおける通信性能が思わしくないことは致命的であり、AP 1のユーザ評価が相対的に低くなる可能性が高いのです。

 

圖二

試験の結果、AP 1のデータが特殊な数値を示したため、AP 1に焦点を絞って検証を続行しました。その結果、Ch 128に設定した際のスループットが最適な結果を示し、Ch 36とCh 64に設定した際の動作よりも優れていることが分かりました。これは、ユーザが自分で帯域幅をCh 128に調整しなければ最適な通信速度を得られないということになります。もしユーザが初期設定状態であるAutoモードだけでAP 1を使用した場合、動作が不安定になることでしょう。アリオンからの提案としては、AP 1の帯域幅におけるAutoモードに対策を施し、Chの自動選択がより適切に行われるように、ファームウェア、ドライバの更新・修正を行うことです。それによって、ユーザが適切な帯域幅を手間を掛けずに利用できるようになります。

圖三

II. OTAスループット試験(OTA Throughput Test

OTAスループット試験では、アクセスポイントが外部からの干渉を受けない環境におけるワイヤレススループットの安定性を測定できます。そのため、純粋な試験環境を整えるために、アリオンでは音声とノイズ障害がない試験環境を構築しました。3機種のアクセスポイントのアンテナは全て本体と一体型です。様々な角度・方向によってOTAスループットが受ける影響を検証する必要があったため、複数の角度(0°、45°、 90°、135°、180°、225°、270°、315°)での信号出力(LOS,Light of Sight)をシミュレーションしました。

試験の結果(図4)、AP 1をCh 36とCh 64の帯域幅に設定した時には、全体的な特性はAP 2とAP 3に機能的に及ばないことが分かりました。また、AP 1は転送帯域幅をAutoモードに調整しても、全体的には信号転送特性が最低な状態を維持していました。特に90°と180°、225°の時のスループットは最も不安定な結果(図5)を示しました。AP 1のアンテナ設計と配置に関しては、検証結果に基づき、様々な角度によるスループットの安定性を確保するように提案することができます。

 

圖四圖五

III. 総合負荷試験(Association Capacity Test

総合負荷試験は、多くのユーザが同時にアクセスポイントに接続した際に生じる大きな接続負荷に耐え、一定のデータ転送性能の持続性を確認する試験です。アリオンでは実際の利用シーンに合わせるために小型オフィスを準備し、Azimuth測定器を使って負荷状態が極大値となるようにシミュレーションしました。なお、一般のオフィスでの利用については実環境を考えず意図的に負荷を高めて構築したわけではなく、およそ100名のユーザが同時に使用する状況を想定した環境を構築しました。

試験結果(図6)としては、AP 1とAP 2が共に問題なく総合負荷試験に合格しました。しかし、AP 3については5GHz設定時において、通信状態に滞りなく同時接続を保つことができたのは36台の同時接続までとなりました。AP1とAP2が127台同時接続に耐えられたことと比較すると、AP3はこの試験項目においては性能を発揮しなかったということになります。

 圖六

IV. 長時間負荷試験(Overtime Stress Test

高いデータ転送量とマルチタスクによる長時間の負荷試験を行い、アクセスポイントのスループットの時系列的な変化を検証することで、アクセスポイントのソフト、ハードウェアの設計と品質の評価が可能になります。

試験結果(図7)は、3種類のアクセスポイントに対する長時間負荷試験結果には顕著な差が見られないことが分かり、着目点としては、AP 1についてはスループット試験とOTAスループット試験でAP 2とAP 3に及ばなかったものの、一定水準に達しているということです。AP2やAP3に劣った原因の一つとして考えられることは、AP 1のアンテナの基本設計面に問題があるのではないかということです。APアンテナの設計と位置が適切でなければ、スループット特性に直接影響を与えます。更に考えられる原因としては、AP 1の基板設計と関連部品・組立部品の配置によってノイズ障害が起こり、全体的な転送効率が落ちているのではないかということです。

圖七    

V. 温度耐性試験(Extreme Temperature Test

様々な環境における温度変化をシミュレーションして、アクセスポイントの温度への適応性を検証しました。試験では-50゚Cから150゚Cの温度範囲をシミュレーションしています。アクセスポイントの組立部品と設計構造がこのような極端な気温の変化に耐え、平常時と変わらず安定したスループットを保てるかを12時間連続で測定して検証しました。そして、この結果を元に3機種のアクセスポイントの安全性と耐久性を把握しました。

試験結果(図8)からは、3機種の機器がそれぞれ温度変化試験に合格したことが分かります。しかし、スループット値で比較すると、AP 1(45.177 Mbps)の通信性能はAP 2(86.034 Mbps)とAP 3(72.29 Mbps)には及ばないものでした。

圖八

VI. ヒートマップ試験(Heat Map Test

ヒートマップ試験は、アクセスポイントの設定によるスループットと信号強度、無線対応領域への影響を測定することを目的としています。画像化したデータと色分けにより、各機器におけるスループットの変化状況を把握できました。そのうち赤で示した部分の信号強度が最低で、青で示した部分が最高であることを示しています。

試験結果(図9)は、AP 1は信号品質も無線対応領域もAP 2とAP 3に遠く及ばず、2機種のほぼ25%分にしか至らないことを示しています。この結果を受けて、アリオンではこれまで蓄積した経験から解決策を策定し、AP 1におけるヒートマップ試験で判明した問題点を解決ことができました。一つ目の解決策としては、AP 1に電波吸収体(Absorber)を装着してノイズ障害を防止すること、2つ目としてはAP 1を反転設置してアンテナの位置を変更することです。いずれの方法でも、AP 1の対応領域が広まったことを確認しています。この結果から分かることは、AP 1にはシールド材(Shielding)または電波吸収体を装着することでノイズ障害を防止する、もしくはアンテナ位置を新たに設計しなおす必要があるということです。これらの施策によってAP 1の通信性能は改善されることでしょう(図10)。

列印

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VII. ストリーミング性能評価試験(Streaming Media Performance Test

ストリーミング性能評価試験は、一般ユーザの日常生活での利用シーンをシミュレーションして実施する試験です。マルチメディア映像、音声及び画像などの配信によって、通信品質が規格に達しているか、そして配信中にアクセスポイントが無線干渉を受けることで、配信の遅延や中断などの問題が起こるか検証を行いました。

試験結果(図11)は、アクセスポイントが3種類ともストリーミングメディアの性能評価試験に合格し、一般ユーザのニーズに適うことを示しています。特に、AP 1の過熱状況(17.4度)がAP 2(19.9度)とAP 3(20.5度)より優れていることが分かりました。これはつまり、AP 1は過熱保護処理のメカニズムが3種類の中では最も優れているということになります(図12)。しかし、その他の試験結果と照らし合わせても、AP 1には問題が多いことが分かります。AP 1のチップセットは実際には大きな問題が見られないことから、RF信号障害と信号品質検証を実施して部品とアンテナ設置に関する対策を取ることにより、データ転送とノイズ障害の問題を更に深く探り出せると推測します。

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圖十二

世界をリードする総合的な検証企業として、アリオンは無線検証の分野で確かな実力と豊富な経験を蓄えてきました。Wi-Fi 802.11acは徐々に市場の製品に浸透しています。それに合わせ、アクセスポイントといった関連分野の製品品質と発展状況についても、市場で注目を浴びるのは間違いありません。アクセスポイントは親機としても中継器としても、家庭内やオフィス、自動車内、公共のスペースといった無線ネットワークを構築するシーン全体で大きな役割を担っています。この役割が重要になるにつれて、通信速度や通信領域といった性能品質を保つために、更に厳格かつ高レベルの検証体制が必要となることでしょう。この評価レポートでは、市販されている3種類のアクセスポイントに対象を絞って比較分析を行いました。将来的には無線転送技術を備えた製品の開発メーカー様にこれまで以上に正確で、機能の深い部分にまで検証を行えるよう、アリオンのサービス範囲を拡大していく予定です。

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