Allion Labs / Felix Kao
2018年と、Bluetooth技術が誕生から20周年を迎えました。最初はモデム時代の2Gダイヤルアップ接続における過渡期の技術としてエリクソンが策定したのですが、現在ではPAN(Personal Area Network)において揺るぎない地位を確立しています。
音楽を聴くためにBluetoothを利用する人が多いことでしょう。iPhoneから3.5mmイヤホンジャックが廃止されたことが、Bluetoothイヤホン・スピーカーの普及を間接的に加速させました。技術の進歩によってBluetooth 5は従来規格と比べ通信速度が2倍、通信距離が4倍、ブロードキャスト通信容量が8倍になりました。そのほか、低消費電力といったメリットに加え、Bluetoothイヤホンの遅延と連続使用時間が大幅に改善されました。動画鑑賞・通話・音楽鑑賞には非常に便利です。しかし、Bluetoothイヤホン・スピーカーの価格差は大きく、Bluetooth技術を使用した市販のイヤホン・スピーカー・アンプの値段は、数千円台から数万円台まで様々です。我々が調査を行った結果、ドライバーの値段や、新しいノイズキャンセリング技術とヘッドフォンの圧迫感軽減技術だけでなく、Bluetoothユニット本体が対応するオーディオコーデックの種類も、価格に差が出る要因の一つだと分かりました。
しかし一般的なユーザーユーザーが製品を選ぶとき、価格とBluetooth機能の品質が連動するかどうかは、検証してみないとわかりません。
以下はLip Sync delay(リップシンク遅延)を例にして、Bluetooth製品でよく見られる問題を解決するための方法を分析します。動画鑑賞中の音ズレは、ユーザーがBluetooth製品を使うときよくある問題の一つです。この問題はユーザーのメーカーに対する信頼を揺るがすだけでなく、メーカーがBluetoothユニットを選択するときにコスト面で悩むところでもあります。
音声の遅延に対し、どのような評価・比較を実施すれば、ユーザー満足度の向上とメーカー側のコストダウンという目的を両立させることができるでしょうか。アリオンは客観的なかつ具体的な検測方法を提案してみました。
アリオンの検測設備:
- オーディオソース(Bluetooth機能内蔵):ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、テレビ
- 種類の異なるコーデックに対応するBluetoothユニット:SBC、Apt-X、Apt-X Low Latency、Apt-X HDなどに対応
- オーディオシンク:Bluetoothイヤホン・スピーカー、あるいは一体型スピーカー
- 音声・映像センサーとリップシンクフィクスチャ(Allion® Audio / Video Sensor and Lip Sync Fixture)
- オシロスコープ
- 校正済みの映像・音声同期ファイル
Bluetoothイヤホン(またはスピーカー)とディスプレイにセンサー(Audio/Video Sensor)を一つずつ設置し、センサーをアリオンが開発したリップシンクフィクスチャに接続します。センサーで集められた情報を、リップシンクフィスクチャを通してデジタル信号に変換し、オシロスコープに接続します。メディアプレイヤーで校正済みの映像・音声同期ファイルを再生し、音声の遅延状況を検測します。その時のディスプレイ画面(図一の右上)を見ると、黄色の線が破線に切り替わったのは映像の再生開始時間で、緑の線が波線になったタイミングは黄色の線が破線になったタイミングより明らかに遅れています。このタイムラグからリップシンク遅延を測定することができます。
次は組み合わせを変え、異なる使用状況でのリップシンク遅延を検証・比較します。
一つ目の組み合わせから見てみましょう。市販のノートパソコン・タブレット・スマートフォン・スマートテレビには、たいていBluetoothユニットが内蔵されていますが、Bluetoothの音楽通信機能はOSのBluetoothスタックに含まれるA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)が担当します。A2DPのバージョン、及び通信プロトコルであるAVDTP・GAVDPが対応する機能の違いにより、通信速度とコーデックの対応能力も異なります。アリオンのBluetoothデバイスライブラリーでは、世界中のメーカーのBluetoothデバイスをテストベッドとして定期的に購入しています。これらの各映像・音声デバイスでBluetooth接続を行ったときのリップシンク遅延を測定します。
しかしA2DPは一番基本的なSBCコーデックにしか対応しない場合が多いため、一部の新しいコーデックには二つ目の組み合わせで検証する必要があります。二つ目の組み合わせは種類の異なるコーデックに対応するBluetoothユニットを使用するため、Bluetoothイヤホンが本当に適切なコーデックに対応するのかを検証できるだけでなく、新しいコーデックが導入されたら、リップシンク遅延がどのように改善したのかも検証できます。例えばクアルコムのApt-Xを採用すれば、理想的な状態ではリップシンク遅延が大幅に軽減されます。
まとめ
リップシンクに影響を及ぼす潜在的要因は数多く挙げられます。例えばネットワーク環境、メディアプレーヤーの種類、映像・音声自身のコーディング効率、あるいは外部からの通信干渉やバッファー方式の違いなどが音ズレの原因になり得ます。主観的な「感覚」を、変数としての「数値」に変換することが、製品の開発評価と品質改良には重要です。アリオンはBluetoothラボとして、経験豊富なBluetooth検証チームを有し、専門的な検測機器やフィスクチャだけでなく、Bluetoothデバイスライブラリーも備えているため、全面的なパフォーマンス評価を行うことができます。Bluetooth製品を開発しているメーカーの品質向上のみならず、マーケティングや製品企画といった価格設定戦略にもお役立ていただけることでしょう。