Allion Labs/ Flash Liu
無線LANの2.4 GHz帯はチャンネル数が少ない割に、この帯域を利用する技術規格が多すぎるため、混雑しやすくなってしまいがちなのは周知の事実でしょう。5 GHz帯のチャンネル数は2.4 GHzより多いですが、その大半はDFSチャンネルです。DFSチャンネルを利用しないと、5 GHzのメリットも半減してしまいます。それではDFSとは、いったい何なのでしょうか。通常のチャンネルとは何が違うのか、なぜ影響が大きいのか、ここで皆様にご説明します。
DFSとは
DFSは動的周波数選択(dynamic frequency selection,DFS)の略称です。DFSチャンネルは、Wi-Fiと気象観測・軍用レーダーが共用する5 GHzチャンネルのことです。5GHz帯は多くの国で気象観測・軍用レーダーとして利用されていることから、一部のチャンネルがWi-Fiで利用するチャンネルと重複しています。安全性を確保するため、重複チャンネルを利用するWi-Fi製品に対し、DFS認証を実施する必要があります。
DFSの認証規範によると、5 GHz帯を利用するWi-Fi製品が同じ帯域でレーダー波を検知した場合、自動的に他のチャンネルに変更しなければなりません。利用できる5GHzチャンネルは国によって異なりますが、高いアンチジャミング技術を持つ国では、より多くのチャンネルが開放されるのに対し、チャンネルが少ない、あるいは開放されていない国もあります。
例えば、アメリカと他の一部の国では、レーダーシステムは免許不要の国家情報社会基盤機器(U-NII)の一部の帯域を利用しています。これらの帯域で動作するWi-Fiネットワークは、レーダー検知と自動回避機能が必要なのですが、各DFSチャンネルにDFSサポートを追加する形でカバーされています。
表一:各国で開放されている5GHz帯域
Wi-FiはDFS帯域を利用する理由
2003年の世界無線通信会議(WRC: World Radiocommunication Conference, 国際規定である「無線通信規則」の改定を行うための世界無線通信会議)では、無線LANの利用と帯域幅の需要が拡大することを踏まえ(この時点では802.11n規格はまだ準備中)、5250から5350 MHz(100 MHz幅)及び5470から5725 MHz(255 MHz幅)の帯域を世界共通で使えるように拡大されました。
いつから規制が始まったか
アメリカでは2007年の時点で、無線LAN帯域共用のセキュリティ問題が発覚していました。そのため、連邦通信委員会(FCC)は5.250 GHz – 5.350 GHz 及び 5.470 GHz – 5.725 GHz 帯の設備を使い、動的周波数選択と電波強度制御を導入し、気象観測・軍用レーダーへの干渉を避けようと呼びかけてきました。
2010年になると、連邦通信委員会は空港の気象観測ドップラー・レーダーシステムへの干渉を回避するため、さらに5.470 GHz – 5.725 GHz 帯の使用方法を策定しました。今のところ、世界中の国々でこれに似たチャンネル規制と電波強度制限が策定されています。
DFSに必須な機能
DFSチャンネルの使用は室内に限られ、屋外での使用は禁止されています。また、使用する前にはしばらく信号送信を停止する必要があります。さらに、軍用・気象観測レーダーを妨害しないよう、軍用・気象観測レーダー波を検知した場合には自動的にチャンネルを変更しなければなりません。802.11a規格は5GHz帯を利用します。この規格はアメリカでは問題になりませんが、ヨーロッパでは強く反対されました。なぜなら、ヨーロッパでは、この帯域は軍用レーダーで広く使用されているからです。このセキュリティ問題を解消するため、ヨーロッパで発売される無線LAN製品には、TPSとDFS機能の搭載が義務付けられています。
DFS規制についての紹介は、今回はここまでといたします。次回はDFS機能がどのようにして検証されるか、Wi-Fi Allianceの認証試験との違い、そしてDFSでよく見られる認証問題について、解決策を紹介します。